10月9日(41Asia/Tokyo09) 初戦黒星にも平然 「必要な負け」

戦評

大役に指名された若き右腕が立ち上がりに崩れ、いきなりハンディを負った阪神が、最多勝右腕の前に反撃を最小得点に抑えられファイナルステージ初戦を落とした。

明日なき戦いの末に辿り着いた東京ドーム。今季15勝をあげて最多勝・最多奪三振・最高勝率の3冠に輝いた巨人先発・山口に挑む阪神は、シーズン開幕と同じく木浪・近本の1・2番。クリーンアップは福留・マルテ・糸原。下位は高山・大山・梅野と続く。山口は緊張感の中、木浪と福留から三振を奪う貫禄の立ち上がりを見せた。2回・3回もマルテ・高山・大山・梅野を三振に仕留めるなど、序盤は打者9人を完全に封じ込めた。

阪神は今季プロ初勝利をマークした高卒4年目・望月をファイナルステージ開幕投手に抜擢した。セ・リーグ覇者・巨人は、亀井・坂本勇・丸・岡本とベストの上位4人に今季限りで引退の阿部が5番。下位はゲレーロ・田中俊・小林の並びで迎え撃つ。CSプロ初登板の望月は初球から154km/hを記録。いきなり亀井を歩かすも坂本勇は遊ゴロ併殺。しかし、3番 丸にフルカウントからの152km/h直球をバックスクリーン左へ運ばれて先制ソロ本塁打を浴びる。続く岡本にもフルカウントからのフォークを捉えられレフトスタンドへ2者連続アーチを喰らい、初回2点を失った。

2回裏には田中俊の中前安打などで二死1・2塁とされて、1番 亀井にフォークを打たれレフト線適時二塁打で追加点。続く坂本勇にも変化球を上手く運ばれ中前2点適時安打を許して、失点を重ねる。望月は、この回限りで交代。2回(62球)5安打1三振 3四球 5失点だった。「大事な初戦を任せて頂いたのに早々にマウンドを降りる事になり、チーム・応援してくれているファンの方々に申し訳ない」。これが大一番の重圧なのか? 望月惇志投手は、責任を一身に背負うような悲痛な降板談話を残している。

4回表二死から阪神は福留・マルテがともに右前安打を放ち、糸原・四球で二死満塁と初めてビッグチャンスを迎えた。6番 高山の打席中、山口の暴投で阪神に1点が入った。5回表は先頭・梅野が四球を選ぶが、岩貞の代打・鳥谷は二ゴロ併殺打に倒れて追加点には至らない。
    
阪神は3回裏から『第2先発』として準備していた岩貞を送った。岩貞は3・4回を3人ずつで抑えて、試合を落ち着かせる。3人目はベテラン能見が中盤の2イニングを無失点に凌いで、終盤に望みを繋いだ。7回裏は守屋が、亀井の大飛球を好捕したセンター近本の美技にも救われて3者凡退。次の8回裏も、走者は背負いながらも無失点で切り抜けている。猛虎自慢の救援陣は健在だ。

8回表 阪神は、先頭9番・途中出場の北條が左前安打で出塁する。山口が次の木浪を二ゴロに打ち取ったところで、巨人ベンチはサウスポー中川へスイッチ。中川が木浪を遊飛、福留を空振り三振に仕留めて見事な火消しを果たした。巨人・山口は7回1/3(126球)4安打7三振3四球1失点。プレッシャーがかかるファイナルステージの先陣を務め、文句無しの内容を見せつけた。

9回表は、巨人守護神・デラロサが登板。阪神は一死から糸原・高山が共に中前安打を放ち、1・2塁とする。代打・原口は三ゴロ併殺崩れも、梅野・四球で二死満塁となり、9番 北條に打席が回る。北條はフルカウントからの内角変化球をハーフスイングで粘って押し出し四球をもぎ取る。ここで原監督は、堪らず田口をリリーフに。阪神も一塁走者に代走・植田を送って双方勝負に出るが、1番木浪が三ゴロに倒れ、万事休す。5対2で巨人が逃げ切った。

巨人が速攻と山口の好投でファイナルステージ初戦を白星で飾り、アドバンテージと合わせて2勝0敗とリードを奪った。痛い黒星スタートとなった阪神だが、リリーフ陣の踏ん張りと最終回の粘りでしっかり見せ場は作った。ファーストステージからの勢いは続いている。「失うモノがない戦い」に悲観材料など見当たらない。2戦目以降も同じ姿勢でやり抜くだけだろう。

「(山口は)絞り切れなかったと言うか?調子良かったよね。特に立ち上がりは良いコースにも来てるし、フォークも切れてるし、まぁそう簡単に打てるような状態ではなかったんで。だからこそ、失点少なく行ければ良かったと思うんだけど」。矢野燿大監督は、巨人の先発右腕に脱帽のコメントだ。この一戦、先発に若い望月を選んだ理由を「一番元気な奴をね。モッチーかな?と思っただけで。あとは経験も積ませられるって言うのもあるし。投手はちょっと(ファーストステージで)みんな多く投げてるんで。総合的に判断して」と説明した。「まだまだ発展途上の投手なんで。ある意味こういう試合で投げた事で、自分の足りない部分と言うか?もっとこうしていかないとダメだと言うところが見えたんじゃないのか」。

初戦を終えて手応えを聴かれた指揮官は、興味深い一言を発している。「ある意味ウチにとっては必要な負けと言うか?オレはそう思ってるんだけど。まぁ、ある意味 もう一つ負けられる訳だから。それをどうする?って言うね。日本シリーズに出る為のモノとしては、最後こうやってデラロサ出して、こういう試合・戦いも出来たし。オレの中では、そういう風に理解してるんだけど」。横浜スタジアムで総力戦を3試合も行い投手陣が疲弊している中、この初戦を落とした事は『必要な負け』と捉えてハンディキャップを覚悟の上で巻き返しを図る。まさに『肉を切らせて骨を断つ』。究極の戦いを見据えた指揮官の強い決意を感じさせるコメントだ。2戦目以降の巻き返しに期待したい。

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