第2クール3日目。朝から冷たい風が吹き曇天だった宜野座に、ようやく日が差し始めた午後2時10分、サブグランドでは鳥谷敬内野手と西岡剛内野手の特守が始まりました。
久慈照嘉内野守備走塁コーチのノックを、約45分間、鳥谷は132球、西岡は139球捕球。ラストは、10球連続で成功できたら終了という条件が課せられ、両選手の動きも熱を帯びます。
特守の目的について、「鳥谷と西岡では違う」と久慈コーチ。西岡の捕球のクセを「正面でも半身で捕ってしまう」と指摘し、「半身で捕って軽率に見せないように、正面に入って捕らないと」。鳥谷については、「守備範囲を広げて、正面に入る。正面に入ったほうが、強い球を投げられる」と課題を挙げました。
特守開始15分後にサブグランドに現れた金本知憲監督は、「西岡は『来やがって』みたいな顔をしてた(笑)。鳥谷はある程度自覚があって、やれと言わんでもやる選手。でも西岡は、やれと言ってもやらない(笑)。首根っこ掴んで尻に火をつけたら、やるかもしれないけど。手抜きの神様。自覚してるよ(笑)。『頑張ってるポーズ』はすばらしい!おそらく日本一じゃないかな」とニヤリ。そうは言いつつも、「キャンプをケガなく乗り切るのが、彼の目標。見て見ぬふりをしてやらないと」と、昨季は右肘のケガに泣かされた西岡を気遣いました。
西岡は「ウエート、ダッシュ、特守、打撃、監督は絶対に見に来るし、常に監視されてる状態」と苦笑いを浮かべながらも、ここまでのキャンプを「疲れているけど、やらないといけない立場。選手全員でコミュニケーションがとれているし、きついけど楽しい。野球の楽しさを、全員が噛み締めてます。試合のための練習をしている」と充実感いっぱい。上本博紀内野手、大和外野手との二塁手争いにも、「楽しんでいる」と余裕を漂わせました。
西岡より3歳年上、34歳の鳥谷は、金本監督が「西岡より動きがいいぐらい」と評価するほど軽快な守備を見せています。昨季は、3年連続となるゴールデングラブ賞を受賞したものの、14失策を記録。久慈コーチは、「年齢は違うけど、3年前と同じぐらいに戻せる」といいます。今季から復帰の久慈コーチが、前回守備コーチを務めていた2013年、鳥谷の失策数はわずか4で、遊撃守備率はリーグ最高の.994。「一番つまらない練習かもしれないけど、やらさないと。普通のショートで終わってしまう」と久慈コーチ。鳥谷の実力を知るだけに、再生に力を込めました。
練習中に明るい表情を見せることも多くなった鳥谷に、就任直後から「鳥谷が変わらないと、チームが変わらない」と断言する金本監督は「シートノックでも、野次ったり声を出したり、変わりつつあるかな」。「キャプテンの自覚を当然持ってもらわないと。自身が変わろうとしてくれるのは助かる。行動、言動、成績、全部で引っ張っていってほしい」と厚い信頼を寄せます。
「鳥谷と西岡が声を出せば、後も自然と出てくる。Wリョウタとね。ゴメスもノッて、前向きなシートノックをしてるよね。勢いに乗って、前向きに止めるんだというのが、実戦でできるように」と指揮官。鳥谷と西岡の躍動が、チームに活気を与えます。