戦前の職業野球創設期のユニフォームを見たいと思っても、それはなかなか難しい。残念ながらほとんど残っていないのだ。
現在公になっているのは3着。
野球体育博物館にある東京ジャイアンツと名古屋軍のユニフォーム。そしてあともうひとつが、愛媛県生涯学習センターの人物博物館が保存している、大阪タイガースのグレーのユニフォームである。
職業野球がスタートした1936年に森茂雄初代監督が着用していたグレーのユニフォームで、胸マークはOSAKA。袖にはあのトラのマークもついている。森監督は愛媛県出身なので、人物博物館が寄贈を受けて保存しているワケだ。
タイガース・ファンなら、間違いなく一度は見ておきたいユニフォームだと思う。
初代のトラはシニールレターと呼ばれる刺繍で作られていた。これは1ミリのフェルトにループ状に糸を打ちこむ刺繍で、アメリカのスタジャン・メーカーが得意とするスタイルだ。現在もオーソドックスなスタジャンのマークには、このシニールレターが使われているコトが多い。戦前のトラのマークは実に凝った刺繍で作られていたのである。
それから凝っていると言えば、胸マークや背番号といったレターやラインも凝っていた。すべてに金のテープでパイピングが施され、丁寧に縫いこまれている。おそらくすべて手作りなのだろう。製造元は美津濃で、非常に手のこんだユニフォームであった。
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